読書のものさし

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文章の手直しに時間がかかるあなたに ~唐木元「新しい文章力の教室」の感想~

 

ライティング

 

文章力を向上させたい執筆のスピードをあげたい

そんな思いにかれる方は多いのではないでしょうか。 

 

かくいう私もそのひとりです。

いかんせん、執筆のスピードがあがりません。 

 

のみならず、いちど書いた文章に、

手を入れることにも時間を奪われます。

 

ところで、なぜ文章がスムーズに書けないのか、

その理由には、いくつかの原因がありそうです。

 

・何を書くか分からない(内容)
・どう書くか分からない(方法)
・手直しに時間がかかる(推敲)

 

今回読んだ本は、そうした悩みにアドバイスをくれる、

「新しい文章力の教室」という文章の上達法を説く指南書です。

 

もちろん、執筆の際のアドバイスも豊富に紹介されています。

他の書籍とは異なるキラリとした個性が光っていますよ。

 

🔻 『新しい文章力の教室』の内容 

 

本書は、コミックナタリー初代編集長の著者が、文章の書き方を指南する「できるビジネス」シリーズの一冊。全5章、77のチャプター形式に分かれた構成で、実際の研修で使われる、ナタリー式の文章術を学べます。

 

Amazonへのリンク画像)

 

著者は冒頭で「良い文章とは何か」と読者に問いかけます。あなたなら、どう答えますか。「洗練されている」「読みやすい」「イメージが浮かぶ」などなど……。著者はこう定義します。

 

良い文章とは「完読される文章である」、と。書き手が過不足なく情報を伝え、読者にメッセージを送ることこそが、良い文章の不可欠な要素である、というのです。では良い文章を書くためには、どうすればいいのでしょうか。

 

それは文章を書き始める際の事前準備を怠らないことにあるといいます。執筆にかかる前に、あらかじめ文章全体の「主眼」「骨子」を組み立てる必要がある、と。「主眼」とは、文章全体のテーマ、あるいは切り口のこと。これは書き手が、文章を書く目的に該当するものです。

 

また「骨子」とは、記事全体の骨組みのこと。各トッピクスをどんな要素に分け、どのような順序で述べ、どれくらいのボリュームに仕上げるか、これが「骨子」の中身になります。いわば記事全体のトータルデザインとも言えます。

 

この「主眼」「骨子」をプランニングして、実際に執筆することを、本書では「構造的記述法」と呼んでいます。 この基礎事項をふまえ、文章の仔細な注意点を説いたのが本書の中心部となります。うーん、何とロジカルな構成なのでしょう。

 

 

🔻「新しい文章力の教室」の感想

 

私が本書を手にとったのは、文章を手直しする推敲の時間に、大幅に時間がかかることにありました。推敲がとにかく苦手なのです。書き上げてから文章に手を入れても、時間を置いて見直すと、どうもしっくりこないことが多い。

 

推敲のポイントをもっと効率よく指南してくれないかとの思いで、本書を手にとりました。本書には、第2章に、推敲する際のポイントが設けられています。しかし、私の見たところ、他の章でも参考になる注意事項が多く挙げられていました。こんな感じに。

 

☑ チェック!

1・属性を問う主語は「こと」で受ける
2・時間にまつわる言葉は「点」か「線」かに留意する
3・努力を 名詞と呼応する動詞を選ぶとこなれ感が出る

 

具体的に事例をひきましょう。1の属性を問う主語について。「私の趣味は……」「私の長所は……」といった属性を文の主語にする際、述語の後には、「こと」が入ることは、お分かりになると思います。

 

例文:私の趣味は映画を鑑賞することです。

 

これは「特徴」や「長所」といった言葉が、名詞でなければ受けられないからです。例文は、単調な構造のため間違いを起こしにくいですが、文の構造が複雑になると、「こと」が抜けてしまうことが、私にはよくあります。執筆の際の注意点のみならず、推敲する際のポイントも、チャートごとに分かりやすく解説してくれます。

 

🔻 執筆を全体のプロセスからとらえると……

 

世の中には、文章力の向上をうたった書籍が多く出回っています。試しに、書店に並ぶ数冊の指南書を手にとりましたが、その多くが書く際の注意点に向けられていました。本書が優れているのは、文章を書く際のコツを網羅するとともに、推敲にも等しく目配せがされている点です。

 

それは本書の構成にもうかがえます。先にふれた第一章の「主眼」と「骨子」を説明した次章が、「読み直して直す」という推敲の章に割かれています。こういった構成は、他の書籍ではなかなかお目にかかれません。

 

私は初めから完璧な文章を書きあげることなどできません。最初は勢いにまかせ、文章を書きあげた後、推敲を繰り返しながら、完成に近づける方が、時間の面からも、断然、効率良いからです。画家が、絵の制作にとりかかる際、事前にスケッチを描き、完成イメージを膨らませるのと一緒です。

 

執筆の作業は、脱稿までに至る全体のプロセスからすると、その一部にしかすぎません。いちど書いたら、余分な言葉をけずり、不足分の言葉を補いと、数度の手直しを入れて、初めて脱稿にいたるからです。

 

私は本書をすすめるのは、その推敲する際の注意事項が各章に紹介された点にあります。チャート式なので非常に見やすく、参照しやすい点も良いですね。文章を上達させたい方に、ぜひ手に取ってほしい一冊です。

 

✎まとめの感想

書き上げただけの文章は、脱稿するまでの全体のプロセスからすると、あくまで(ことばの)素材を集めたにしか過ぎない。 

 

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