読書のものさし

おもに九州に縁のある作家や作品を紹介する書評ブログ

2018-12-01から1ヶ月間の記事一覧

【名著】神の存在意義を問う衝撃作!遠藤周作『沈黙』のレビュー

今回読んだ本は、遠藤周作『沈黙』。 文庫本にして300ページ近くにのぼる歴史小説です。 禁教令を布く江戸時代の日本で、ポルトガルから来航した神父が、 棄教か殉教かの二者択一を迫られる、その心理を描きます。 2017年には、マーティン・スコセッシ監督が…

今を思いっきり楽しみたい! 若者の不変的な心理を描く、極上のエンタメ小説・村上龍『69 sixty nine』

今回読んだ本は、村上龍『69 sixty nine』です。 1960年代後半の、作者の実体験がもとになった、 文庫本にして220ページ近くにのぼる青春小説です。 私が初めて読んだのは、作中の登場人物と同じ、十代の頃にさかのぼります。 当時はモヤッとした印象が残り…

アンネの足跡をたどる旅  ~小川洋子『アンネ・フランクの記憶』を読んで~

今回読んだ本は、小川洋子『アンネ・フランクの記憶』。 アンネの足跡を追って、1週間にわたりヨーロッパをまわる旅の記録です。 アンネの著作を読んでない方でも、 充分に理解が深められる内容になっています。 同時にこの旅は、アンネに影響を受けた 作者…

【爆笑】その男、異邦人につき! 深沢七郎「言わなければよかった日記」~

今回読んだ本は、深沢七郎『言わなければよかったのに日記』 3章形式で展開される、260ページあまりのエッセイ集です。 肩の力が抜けた自然体の文章が心地よく、 すいすいと読み継いでいけます。 本書の読みどころは、ひょんなことから文壇の仲間入りをする…

リルケが刻んだ永遠の青年像 ~リルケ『マルテの手記』の感想~

今回読んだ本は、ドイツの詩人・リルケが書いた『マルテの手記』です。 文庫本にして500ページを超える長編小説です。 立派な詩人になりたいと夢を抱くマルテが、 都会のパリへ上京してきた日々の記録が綴られています。 「マルテの手記」には、不慣れな世界…

胸躍る、時代小説の人気作家が描く戦国ロマン ~山本周五郎「秘文鞍馬経」を読む~

埋蔵金伝説に心惹かれる。その魅力は、真偽の定かでない「いかがわしさ」と、歴史の考証をもとに仮説をたてる「もっともらしさ」にある。徳川埋蔵金の検証番組など、馬鹿馬鹿しいと思いつつも、ついつい見てしまう理由はそこにある。山本周五郎の著作を手に…