読書のものさし

おもに九州に縁のある作家や作品を紹介する書評ブログ

九州の本

【名著】神の存在意義を問う衝撃作!遠藤周作『沈黙』のレビュー

今回読んだ本は、遠藤周作『沈黙』。 文庫本にして300ページ近くにのぼる歴史小説です。 禁教令を布く江戸時代の日本で、ポルトガルから来航した神父が、 棄教か殉教かの二者択一を迫られる、その心理を描きます。 2017年には、マーティン・スコセッシ監督が…

今を思いっきり楽しみたい! 若者の不変的な心理を描く、極上のエンタメ小説・村上龍『69 sixty nine』

今回読んだ本は、村上龍『69 sixty nine』です。 1960年代後半の、作者の実体験がもとになった、 文庫本にして220ページ近くにのぼる青春小説です。 私が初めて読んだのは、作中の登場人物と同じ、十代の頃にさかのぼります。 当時はモヤッとした印象が残り…

林芙美子という生活人 ~林芙美子『風琴と魚の町・清貧の書」の感想~ 

今回読んだ本は、林芙美子『風琴と魚の町・清貧の書』です。 本書には初期の作品群から9つの短編が収録されています。 その大半が作者の身辺に材をとった私小説で、 貧しい生い立ちや夫婦の関係が中心を占めています。 本書を読んで発見がありました。 同じ…

恋愛ベタな僕が大学生に『愛の試み』をおすすめする理由

今回読んだ本は、福永武彦『愛の試み』。 文庫本にして160ページと短い、哲学風のエッセイです。 愛という抽象的な内容をあつかうため、硬質な文体で、 抽象的な言葉が多く使われています。 ですが、エッセイをもとにした挿話付きなので、 読者が実感に即し…

コーヒーのように読後感はやや渋め ~社会派ミステリ「点と線」の感想~

松本清張は、生涯に多くの小説を書き残しました。 清張作品を初めて読む方は、作品の数があまりに多いために、 どれから手をつけていいか、戸惑うかもしれません。 今回、取りあげるのは、文庫本にして200ページと、 初心者の方でも手に取りやすい、推理小説…